作中において、桐生一馬の刺青を彫り上げた人物は、裏社会で伝説と謳われる彫師「初代歌彫(うたほり)」です。初代歌彫は、堂島組の若衆として頭角を現し始めた桐生の並外れた器量を見抜き、一生を背負うにふさわしい絵柄として応龍を刻み込みました。
この初代歌彫というキャラクターおよび作中の刺青描写には、現実の伝統和彫りに対する緻密なリサーチが反映されています。名越稔洋氏をはじめとする初期開発チームの証言や制作秘話によると、ゲーム内に登場する刺青は、単なる記号的なテクスチャとして安易に作られたものではありません。実在する著名な彫師への徹底した取材を通じて、針の深さ、墨のボカシ(濃淡)、朱色の発色、そして筋肉の動きに合わせて絵柄が躍動する構図に至るまで、日本の伝統工芸としての和彫りの美学を忠実に再現しています。
和彫りにおいて、龍の刺青は「彫師の腕が試される最高峰の絵柄」とされています。初代歌彫が魂を削って桐生の背中に刻んだ応龍は、職人が己の生涯の最高傑作として桐生という人間に託した「魂の結晶」でもありました。