「ファンキー」という言葉の深淵に迫る上で避けて通れないのが、その特異なファンキー語源の歴史です。言語学者やブラックミュージック研究者の記録によると、元々のルーツは中央アフリカのキコンゴ語(Kikongo)で「激しい労働の末の強い体臭・匂い」を指す「lu-fuki」にあるとされています。
19世紀から20世紀初頭にかけてアメリカへ渡ったアフリカ系アメリカ人の間で、この言葉は英語のスラング「funk(悪臭、カビ臭い匂い、タバコや汗が混ざり合った濃密な空気)」へと転じました。当初は決して上品とはいえない俗語だったこの単語が、劇的な転換点を迎えたのは1950年代のモダン・ジャズ黎明期でした。
当時、白人主導で洗練化され、知性的・理論的になりすぎていた「クール・ジャズ」へのカウンターカルチャーとして、ホレス・シルヴァーやアート・ブレイキーといった黒人ミュージシャンたちが「もっと泥臭く、ブルースやゴスペルの土着的な情熱(アーシーな感覚)を取り戻そう」と提唱しました。彼らが自分たちの生々しい情熱と汗の匂いを誇らしげに「Funky」と形容したことで、ファンク音楽ルーツの礎が築かれたのです。
その後、1960年代後半から1970年代にかけて、ジェームス・ブラウン(James Brown)やスライ&ザ・ファミリー・ストーン、パーラメントらが16ビートの躍動するシンコペーションを武器にした「ファンク・ミュージック」を確立。「ファンキー=泥臭くも圧倒的にグルーヴィーでかっこいい最高峰の賛辞」という文化的一大ブランドが世界へ浸透しました。