生理のたびに生じる激しい腰痛の正体を突き詰める上で、絶対に外せない生化学物質が「プロスタグランジン」です。不要になった子宮内膜を経血として体外へ排出するため、子宮は筋肉を強く収縮させます。この収縮を強力に促す司令塔となるのが、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンです。
プロスタグランジンの分泌量が適正であれば、軽い生理痛程度で済みます。ところが、分泌量が過剰になると子宮が過度に締め付けられ、局所的な虚血(血液不足)状態に陥ります。さらに、この物質は血流に乗って骨盤周囲の血管や腰まわりの筋肉、神経を強く刺激します。その結果、下腹部だけでなく腰の周辺全体に「ギューッと締め上げられるような鈍痛」や「砕け散るような鋭い激痛」を引き起こすのです。
もう一つの決定的な理由は、内臓痛による放散痛(関連痛)のメカニズムです。子宮と腰部の知覚神経は、脊髄の同じ高さ(仙髄および下部腰髄)を通って脳へと痛みの信号を送っています。脳は子宮から届く強烈な痛みのシグナルを「腰から発せられている痛み」と誤認・混同して処理します。この神経の交差点現象によって、下腹部よりもむしろ腰に激烈な痛みを感じるという構造が生まれます。
加えて、経血の排出がスムーズにいかない骨盤の冷えや鬱血、長時間の座り仕事による姿勢の悪化が重なると、骨盤底筋群や腰方形筋がガチガチに緊張し、痛みのスパイラルが完成してしまいます。「砕けそう」という主観的な表現は決して大げさではなく、物理的な過収縮と血行途絶、そして神経反射が合致した結果生じる、きわめて生化学的・解剖学的な生体反応なのです。