「皮膚表面の一点を押すだけで、なぜ肺や気管支の痙攣が静まるのか」という疑問に対し、現代医学と東洋医学の双方がその機序を解明しつつあります。アリナミン製薬の健康解説資料や鍼灸学の臨床知見によると、ツボ押しによる鎮咳効果は「体性-内臓反射」と呼ばれる神経ネットワークの働きによって説明されます。
皮膚や筋肉に存在する感覚受容器に適度な圧刺激が加わると、その電気信号が求心性神経を通じて脊髄および延髄の孤束核(呼吸や咳を司る中枢)へと伝達されます。この刺激が、気道周辺の過敏化した迷走神経の興奮を抑制し、気管支平滑筋の攣縮(けいれん)を緩めるトリガーとなるのです。
東洋医学の観点では、呼吸器系全般のエネルギー循環を司る経路を「手太陰肺経(てのたいいんはいけい)」と呼びます。この経絡は胸部の奥深くから始まり、鎖骨下を通り、腕の内側を走って親指の爪先へと抜けていきます。咳に効く主要なツボの多くが腕や胸に集中しているのは、まさにこの経絡上に位置しているためです。滞った「気(生体エネルギー)」の巡りを促し、肺の熱を冷まし、呼吸機能を整える作用が経穴刺激の根底に存在しています。