「弦が緩むなら、とにかく極太の弦を張ればすべて解決する」という言説がネット上で散見されますが、これはギター本体を危険に晒す重大な誤解です。太い弦を適切に受け止めるための本体調整を怠ると、楽器の寿命を縮めたり、ピッチが合わなくなったりする致命的なリスクが生じます。
代表的な盲点がエレキギター 太い弦 ナット加工の必要性です。市販のエレキギターの多くは、工場出荷時に「09-42」または「10-46」の太さに合わせてナットの溝が高精度に切られています。そこに突如「.052」や「.056」といった極太弦を無理やり押し込むと、弦が溝の底まで沈み込まずに浮いてしまいます。弦がナットから浮き上がると、開放弦の弦高が異常に高くなり、1〜3フレットを押弦した際にピッチが極端にシャープします。さらに最悪の場合、弦のクサビ効果によってプラスチックや牛骨のナットに過度な側圧がかかり、ヘッド側でナットが真っ二つに割れる事故が発生します。専用のナットファイル(ヤスリ)を用いて、弦の太さに合わせた溝幅の拡張を行うことが不可欠です。
もう一つの見落としがギター オクターブ調整 ネック反りの再セットアップです。全体のテンションバランスが変化すると、トラスロッドの引き戻す力と弦の引っ張り合うバランスが崩れ、ネックが逆反り(ネックが後ろへ反り、開放弦やローフレットがビビる現象)を起こしやすくなります。トラスロッドを適切に緩めて適正な微順反りに戻したうえで、サドルの位置を前後にスライドさせるオクターブ調整を必ず実施しなければなりません。太い弦は芯線が硬いため、オクターブ調整ではサドルを通常よりも大幅にブリッジ後方(エンドピン側)へと下げる必要があります。これを怠ったギターは、ハイポジションのコードが完全に不協和音となってしまいます。