「ハアハアと呼吸が荒くなった直後、激しく泣き叫び、そのまま突然息が止まって白目を剥いた」――このような劇的な発作に直面し、親がパニックに陥る典型例が「泣き入りひきつけ(医学用語:憤怒痙攣 / 息止め発作)」です。生後6ヶ月から2歳頃の幼児に好発し、激しい怒り、痛み、恐怖、強い要求の不成立などを引き金として発症します。
この現象は、激しく大泣きして息を強く吐ききった無呼吸状態で声門が閉鎖し、迷走神経反射や脳血流の一時的な低下が引き起こされることで生じます。数十秒にわたって息が止まる憤怒痙攣を起こすと、顔面や唇がみるみる青紫色(チアノーゼ型)になったり、あるいは逆に青白く(蒼白型)なり、全身の脱力や手足のピクつき(けいれん様運動)を伴って意識を消失することがあります。
目の前で我が子が息を止め、ぐったりと意識を失う姿は凄惨を極めますが、日本小児神経学会等の臨床知見において、息止め発作による後遺症が脳や発達に残ることは原則としてありません。脳の酸素が一時的に低下すると、生体防御反応として反射的に全身の力が抜け、声門が開いて自然に自発呼吸が再開する仕組みになっているためです。発作は通常30秒から1分程度、長くても数分以内に自然軽快し、呼吸が戻れば直前の発作が嘘だったかのように普段通りの意識と顔色に戻ります。
発症時に保護者が実践すべき泣き入りひきつけの対処法は以下の鉄則に集約されます。
- 激しく揺さぶらない:意識を取り戻させようと激しく体を揺すると、乳幼児揺さぶられ症候群(AHT/SBS)による重篤な頭蓋内出血を引き起こす極めて危険なリスクがあります。
- 口の中に物を詰めない:舌を噛むのを防ごうと指やタオルを口に突っ込むと、窒息や気道閉塞、嘔吐を誘発します。口腔内には絶対に何も入れてはいけません。
- 体を横向き(回復体位)に寝かせる:万が一の嘔吐による窒息を防ぐため、平らな安全な場所で体を側臥位(横向き)にし、衣服の首元を緩めて気道を確保します。
- 動画の撮影と時間計測:小児科医がてんかん等の器質的疾患と鑑別する上で、保護者が撮影した「発作の開始から消失までの数十秒のスマートフォン動画」は何物にも代えがたい診断の切り札になります。