作中で読者に最も強烈なインパクトを与えたのが、第317話前後に描かれた通称「黒デク」と呼ばれる単独行動期です。泥と返り血に汚れ、異形の怪物のような佇まいで街を彷徨う姿は、ネット上でも「闇落ち」「主人公失格の危機」と大きな騒乱を巻き起こしました。
しかし、この行動の本質は悪への転落ではなく、極度の自己犠牲精神が生んだ心理的孤立でした。「自分のせいで雄英の仲間が標的にされる」「オールマイトを巻き込めない」という過剰な責任感が、他者との情緒的バウンダリー(境界線)を破壊し、食事や睡眠すら拒絶する強迫的救済行動へと追い込んだのです。
テレビアニメシリーズでデクを演じた声優・山下大輝氏は、当時の特番インタビューやアフレコ後の手記において「息を吸うことすら苦しいほどの切迫感を意識した」と述懐しています。剥き出しの絶望と使命感を宿した鬼気迫る熱演は、SNSやファンコミュニティで「神がかった演技力」「デクの痛ましさが胸に刺さる」と絶賛の嵐を呼びました。この孤立を救ったのがA組クラスメイト全員による説得と抱擁であった点に、本作の根幹テーマが集約されています。