トルコはアジアなのかヨーロッパなのかという疑問に対して、国際機関や各国の公的機関は一様な答えを用意していません。分野や文脈ごとに所属の定義が分かれているのが実情です。
国土の大部分を占める大地に目を向けると、地理学的な区分は極めて明快です。国土面積約78万3,562平方キロメートルのうち、約97%がアジア側に属するアナトリア半島であり、バルカン半島に連なるヨーロッパ側の東トラキア地方はわずか約3%に過ぎません。この単純な数値データだけを見れば、「トルコはアジアの国である」という結論が導き出されます。
一方で、国際政治や外交の現場では異なる光景が広がっています。日本の外務省の地域管轄において、トルコは中東やアジアを扱う部局ではなく、欧州局中・東欧課が担当しています。また、安全保障の要であるNATO(北大西洋条約機構)には1952年という冷戦初期の段階から加盟しており、西側・欧州防衛の最前線を担い続けてきました。
さらに国連の地域区分(UN geoscheme)に目を移すと、トルコは「西アジア」に分類されていますが、国連総会などの地域グループ活動では「西ヨーロッパその他グループ(WEOG)」の審議や投票に参加することが認められています。このように、トルコは単一の大陸に還元できる存在ではなく、制度上も意図的に双方へ足をかけた「複合国家」として扱われています。