インターネット上の掲示板やSNSでは、時に「偏差値60なんて大したことない」「誰でも取れるレベル」といった極端な言説が散見されます。しかし、現場の進路指導担当者は「これは高校受験と大学受験の母集団の違いを混同した危険な誤解だ」と警鐘を鳴らします。
高校受験における母集団は、同年代の中学生のほぼ100%(約98%以上が進学)で構成されます。そのため、高校受験における偏差値60は「地域全体の15.8%」、すなわち県内屈指の進学校や地域2番手校に合格できる極めて優秀な層を指します。周囲からも「神童」「優等生」として扱われる機会が多い水準です。
一方、大学受験の母集団は、その高校生の中から「大学進学を希望する約55〜60%の上位層」へと劇的に絞り込まれます。つまり、高校受験で平均以下だった層がごっそり抜け落ちた母集団の中で再び偏差値が再計算されるのです。その結果、一般的に「高校受験の偏差値からマイナス5〜10した数字が、大学受験での実質的な偏差値」になると言われています。高校入試で偏差値65だった生徒が、高3の大学受験模試で偏差値55前後にとどまるのはごく自然な現象であり、学力が落ちたわけではありません。この構造を理解しないまま「成績が暴落した」とパニックに陥る家庭が後を絶ちません。