スクリーンの中で独特の存在感を放つダンテの風貌を見て、その珍しい姿に驚いた方も少なくないはずです。ダンテの犬種は、メキシコ原産の極めて希少な古代犬種ショロイツクインツリ(Xoloitzcuintli)、通称「ショロ犬(メキシカン・ヘアレス・ドッグ)」です。
ディズニー公式のキャラクターアーカイブ資料や現地の文化記録によると、ショロイツクインツリは約3000年以上前のアステカ文明期から存在していたとされる世界最古級の犬種です。毛がほとんど生えていない無毛種(ヘアレス)であることが最大の特徴で、皮膚から直に伝わる体温の温かさから、古代の人々は病を癒やす湯たんぽ代わりに重宝し、神聖な治療者としても崇めていました。
ダンテのトレードマークである「常に口の横からペロッと飛び出している舌」も、単なるアニメーション的なコミックリリーフの演出ではありません。生物学的にショロイツクインツリの無毛遺伝子は歯の欠損(特に小臼歯の未発達)を伴うケースが多く、歯がない隙間から自然と舌がこぼれ落ちてしまうという、実在するショロ犬特有の身体的特徴を忠実に再現したものです。
さらに重要なのは、アステカ神話におけるこの犬の役割です。冥界と雷を司る神「ショロトル(Xolotl)」の化身とされ、死者の魂が冥界「ミクトラン」へ渡る際、険しい九つの冥界の試練を案内し、猛り狂う川を背に乗せて渡すという「死者の国 魂のガイド」の使命を帯びていました。ミゲルが死者の国へ迷い込んだとき、ダンテが傍らにいたのは偶然ではなく、文化的な必然性に基づいた演出だったのです。