敏文さんが主に活躍していたのは、刑事部の中でも専門性が極めて高いとされる「捜査第二課」です。殺人や強盗といった凶悪犯罪を追う捜査第一課に対し、捜査二課は詐欺、横領、贈収賄、選挙違反といった知能犯罪・経済事件を専門に取り扱う部署として知られています。
帳簿の精査や緻密な裏付け捜査が求められる捜査二課において、敏文さんは持ち前の粘り強さと鋭い洞察力で数々の難事件に向き合ってきました。春菜さんが幼少期の頃を振り返ったエピソードによると、父親は仕事の具体的な内容を家庭内に持ち込むことは一切なかったものの、多忙を極める中でも家族への気配りを欠かさない実直な警察官だったといいます。
刑事という過酷な職業柄、深夜の呼び出しや長期にわたる捜査も日常茶飯事でしたが、敏文さんは愚痴ひとつこぼさず職責を全うしていました。春菜さんの礼儀正しさや、周囲の空気を瞬時に読む高い対応力は、こうした父親の誠実な背中を見て育った賜物であることは間違いありません。