映画版の背景を語る上で欠かせないのが、原作を担当した作家・氷室冴子の存在だ。月刊『アニメージュ』で連載された彼女の小説は、主人公・杜崎拓の一人称視点で語られ、彼の内心の葛藤や思春期特有の複雑な情念がより濃密に描写されている。
一方で、アニメ映画版では拓のモノローグを最小限に抑え、視線や仕草、空間の間によって心情を表現する映像的アプローチが採用された。原作における里伽子の屈折した背景や、彼女が抱く親への愛憎、東京への執着といった「隠された裏設定」とも言える泥臭い要素は、映画では極めて洗練されたニュアンスへとろ過されている。原作ファンと映画ファンの間で議論が絶えないこの変容だが、言葉を削ぎ落としたからこそ、行間に漂う甘酸っぱさと切なさがより一層際立つ結果となった。