ネット上の一部掲示板やSNSでは、損保ジャパン資産売却ニュースが流れるたびに「経営難による保有資産の投げ売りではないか」「旧ビッグモーター不正請求問題などの余波で現金化を急いでいるのではないか」といったセンセーショナルな言説が散見されます。しかし、一次資料や不動産スキームを精査すると、これらの噂は明確な誤解であることが分かります。
第1の誤解は「資金繰りのための売却」という点です。SOMPOホールディングスの連結自己資本やソルベンシー・マージン比率は健全水準を大きく維持しています。今回の資産整理は、金融庁がメガ損保各社に強く求めている政策保有株式の完全売却方針と歩調を合わせた、グループ全体の「資本生産性(ROE)向上」「固定資産の圧縮(アセットライト戦略)」の一環です。巨額の維持改修費がかかる老朽オフィスを自己保有し続けるリスクを排除するのが主目的です。
第2の盲点は「ビルが完全に消滅して無関係になるわけではない」という点です。都市再開発法に基づく市街地再開発事業では、土地・建物の所有権をそのまま現金売却するだけでなく、将来完成する新複合ビルの権利床(区分所有権や共有持分)を取得する「等価交換」や「権利変換」の選択肢が存在します。損保ジャパンおよびグループが再開発後のビルに権利を持ち続ける、あるいは再開発組合に参画して都市開発の果実を長期的に享受する座組みが敷かれています。