植筋工事で失敗が絶対に許されない最大の理由は、新旧コンクリート部材間の応力伝達が途絶し、建物全体の耐震・構造安全性能が設計値を下回ってしまうからです。耐震壁の増設や梁・柱の増打ち補強において、植筋は地震時に発生する強烈なせん断力や引張力を既存躯体へと逃がす「命綱」の役割を果たします。
大手ゼネコンの構造設計担当者は、専門誌の取材に対して次のように警鐘を鳴らしています。
「コンクリートを打設してしまえば、植筋が正しく定着しているかどうかを目視で確認することは不可能です。もし所定の深さまで入っていなかったり、接着剤の硬化不良が起きたりしていれば、大地震の初期段階でアンカーが抜け落ち、耐震補強壁が単なる『重たい障害物』と化して倒壊を誘発することさえあります」
日本建築学会が発行する「接着系あと施工アンカー設計・施工指針」でも明記されている通り、植筋は母材コンクリート、接着剤(樹脂・無機材料)、鉄筋という3つの物性が完全に噛み合って初めて設計耐力を発現します。1箇所の手抜きや計算ミスが構造全体の致命的欠陥につながるため、極めて厳格な施工管理が課されているのです。