加藤清史郎のキャリアを語る上で避けて通れないのが、中学卒業後の「メディア露出の激減」です。当時、一部のネット上では「芸能界引退か」「一発屋で消えた」といった心ない憶測も飛び交いました。しかし実際には、役者としての将来を見据えた極めて戦略的な「自己投資期間」だったのです。
中学時代、舞台で共演した市川海老蔵(現・十三代目市川團十郎)からの「海外を経験し、英語を身につけることは役者としての大きな武器になる」という助言をきっかけに、彼は単身でイギリスの全寮制高校(帝京ロンドン学群など現地の教育機関)へ進学する決断を下しました。2017年から2020年までの3年間におよぶ英国留学生活では、日本の芸能界という温室を飛び出し、本場の演劇教育(ドラマクラス)や語学学習、さらには寮生活における対人交渉のすべてを自力でこなす日々を送りました。
手記や過去のロングインタビューにおいて、加藤は「現地では自分が『元子役』であることなど誰も知らない。何者でもない一人の人間として、ゼロから自分を証明しなければならなかった」と回顧しています。この孤独な環境下で磨かれた自立心と、シェイクスピアをはじめとする本場の演劇文化への没入が、帰国後の圧倒的な表現力のバックボーンとなりました。
帰国後の2020年4月には都内の名門大学(青山学院大学文学部系)へ進学。学業優先の姿勢を崩さず、2024年春に無事卒業を迎えるまで、学友とともにレポート執筆や講義へ真摯に向き合いました。「地に足のついた普通の学生生活」を経験したことは、浮世離れしがちな芸能界において、一般庶民の等身大の感情をリアルに演じるための不可欠な血肉となっています。