インターネット上で「ラクトアイス体に悪い理由」を検索すると、不安を煽るセンセーショナルな情報が多数見受けられます。そうした言説の根拠として槍玉に挙げられるのが、原材料に含まれる「植物性油脂の危険性」と「トランス脂肪酸の真相」です。食品科学の観点からこの問題を冷静に紐解いていきましょう。
まず、なぜラクトアイスに大量の植物性油脂が使われるのかという構造的理由があります。牛乳から採れる乳脂肪は高価なため、低価格で販売するためには安価な植物油で代用せざるを得ません。しかし、液体の植物油をそのまま混ぜるだけでは、アイスクリーム特有のなめらかな固形構造を保てないため、水素を添加して常温で半固体化させる加工処理やパーム油の利用が行われてきました。
かつてこの硬化油を製造する過程で副産物として発生していたのが、悪玉(LDL)コレステロールを増加させ動脈硬化リスクを高めるとされるトランス脂肪酸でした。これが「ラクトアイス=危険」というイメージの震源地です。しかし、現在の国内メーカーの取り組みを取材すると、状況は大きく様変わりしています。
農林水産省の調査データや大手菓子メーカーの公開資料によると、2010年代以降、国内の油脂加工技術は劇的に進化しました。部分水素添加油脂の不使用や製法の刷新により、現在流通している大手ブランドのラクトアイスに含まれるトランス脂肪酸量は、1個あたり0.1g未満という極小レベルにまで低減されています。これは一般的な天然の牛乳や牛肉に含まれる微量トランス脂肪酸と同等、あるいはそれ以下の水準です。
したがって、「トランス脂肪酸まみれで危険」という言説は過去の知見に基づいた誤解と言えます。ただし、健康リスクが皆無というわけではありません。植物性油脂の主原料であるパーム油には「飽和脂肪酸」が多く含まれており、過剰摂取すれば血流悪化や肥満のリスク要因となります。毒物のように恐れる必要はありませんが、日常的に油分を過剰摂取している現代人にとって、摂取頻度をコントロールすべき食品であることは確かです。