現在の日本製鉄を語る上で避けて通れないのが、米鉄鋼大手「USスチール(U.S. Steel)」の買収劇と、それに伴う今後の株価見通しです。
巨額を投じるこの大型買収は、成長が見込める北米市場の高級鋼板サプライチェーンを一気に手中に収めるための歴史的一手でした。買収交渉の過程では、米国内の鉄鋼労組(USW)の警戒感や政治的思惑が渦巻き、市場には不確実性による株価の停滞感も生じました。しかし、買収に伴う生産能力の拡大と現地供給体制の完成は、中長期的なキャッシュフロー創出力の飛躍的向上を意味します。
一方で、投資家が注視すべき構造的リスクも存在します。中国鉄鋼メーカーによる過剰生産品の安値輸出がアジア市況を冷え込ませるリスク、そして脱炭素(グリーンスチール)に向けた大型電炉への巨額設備投資です。成長投資への資金流出が一時的に財務体質を圧迫すれば、株主還元の余力にブレーキがかかる懸念もゼロではありません。
それでもなお、国内での不採算設備休止を断行し、高級鋼に特化した「値決め交渉力」を勝ち取った日本製鉄の筋肉質な収益基盤は健在です。世界的なインフラ需要と脱炭素プレミアムを捉えられれば、株価はボックス圏を抜け出し、新たなステージへ進むポテンシャルを秘めています。