昔からまことしやかに囁かれてきた「白髪を抜くと増える」という噂ですが、皮膚科学的な観点から言えばこれは明確な迷信です。一つの毛穴から生える毛の本数はあらかじめ決まっており、一本抜いたからといって周囲の毛根が連鎖して白髪に変わるような感染的現象は起こり得ません。白髪を抜く年齢層はちょうど白髪の増殖期と重なっているため、「抜いたあとに別の場所で増えた」という錯覚が生じやすいのが真相です。
しかし、「抜いても増えないなら抜いてしまおう」と考えるのは極めて危険です。白髪を無理やり引き抜く行為は、毛根を包む毛包組織を強引に引き裂き、毛乳頭を破壊します。毛穴内部で炎症(毛嚢炎)を起こしたり、毛根が歪んで生えてくる髪が強い縮れ毛になったりするだけでなく、最悪の場合は毛根そのものが死滅して二度と髪が生えてこなくなる牽引性脱毛症を招きます。見つけた白髪は絶対に抜かず、眉用などの小さなハサミを用いて根元から数ミリ残して丁寧にカットするのが鉄則です。
また、昨今ネット広告で目にする白髪サプリの評判にも注意が必要です。「飲むだけで黒髪が蘇る」と謳うサプリメントが存在しますが、日本国内の医薬品医療機器等法(薬機法)において、白髪を黒く戻す効果が承認された経口サプリメントは存在しません。チロシンやビオチン、亜鉛などの栄養補助としての価値はあるものの、過剰な期待を抱いて高額な定期購入に依存するのは避けるべきです。