下処理をしたはずの筍を口にした瞬間、舌を刺すような強い渋みやえぐみを感じた経験を持つ人は少なくありません。たけのこアク抜き失敗の真相を追究すると、多くの調理者が「ゆで時間の長さ」だけに気を取られ、その後の工程で致命的なミスを犯している実態が浮かび上がってきます。
筍のえぐみの主成分は、主に「シュウ酸」と「ホモゲンチジン酸」の2種類です。これらは収穫直後からアミノ酸の一種であるチロシンが酸化・分解されることで急増します。このえぐみ成分を効率よく水中に溶出させ、吸着するのが米ぬかのデンプン質とカルシウム成分の役割です。
しかし、えぐみが残る決定的な理由は、ゆで上がった直後に熱いまま筍を取り出してしまう行為にあります。加熱によって組織が緩んだ筍からアクが完全に抜け出るのは、「鍋に入れたまま常温までゆっくり冷ましていく時間」です。温度が下がる過程で浸透圧が働き、えぐみ成分が外のゆで汁へと排出されます。この冷却工程を省いて急冷したり、すぐに水洗いしたりすると、えぐみ成分が繊維の中に閉じ込められたまま固定化されてしまいます。