1989年7月23日、東京都八王子市内で別の幼女に対する略取未遂容疑により現行犯逮捕された。その後の取り調べで凄惨な自供が始まり、事件は急展開を迎える。しかし、真の騒乱は捜査の裏側で進行していた。
逮捕直後、テレビと新聞は容疑者の自室を連日大々的に報道した。天井まで積み上がった約6,000本のビデオテープ、アニメや特撮の録画、大量のコミック本。メディアはこれらを「異常性の証明」としてセンセーショナルに書き立てた。これにより、当時はまだ一部の収集家やファンを指すマイナーな言葉に過ぎなかった「オタク」という存在に、潜在的犯罪者という苛烈なレッテルが貼られた。
後年の調査で判明したのは、6,000本のテープの多くが一般のテレビ番組や映画の録画であり、事件に直接結びつく過激な映像ばかりではなかったという事実だ。だが、過熱する報道合戦は分かりやすい悪者像を必要としていた。この報道被害とレッテル貼りによる偏見は、その後何十年にもわたり、特定の趣味を持つ人々への抑圧として機能することとなった。