プッチ神父の行動原理を解剖する上で、避けて通れないのが「共依存」と「運命決定論への逃避」という心理構造です。神父は若き日、自らの善意から出た行動が引き金となり、実の妹ペルラを自殺へと追い込み、生き別れの双子の弟ウェザー・リポート(ウェス・ブルーマリン)を復讐の鬼へと変貌させてしまった凄惨な過去を持っています。
「なぜ自分はこれほど過酷な運命に弄ばれなければならなかったのか」という耐え難い苦悩の前に現れたのがDIOでした。DIOが提示した「あらかじめ運命を知っていれば、人は絶望せずに覚悟できる」という天国の思想は、自責の念に押し潰されそうになっていたプッチにとって、唯一の精神的免罪符となったのです。
しかし、プッチ神父のこの思想は重大な自己矛盾を孕んでいました。彼は「全人類が運命を知るべきだ」と説きながら、自分自身の死の運命だけは認めようとしませんでした。宇宙が一巡する直前、グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所で生き残った少年・エンポリオを亡き者にしようと焦燥した瞬間、彼は自身が標榜した「覚悟」を自ら踏みにじっていたのです。
最期の瞬間、エンポリオが押し込んだウェザー・リポートのDISCによって「高濃度酸素」を吸わされ、全身の細胞を破壊されて無残に崩壊していくプッチ神父。彼を滅ぼしたのは、最強のスタンド能力ではなく、プッチ自身が過去に切り捨て、奪い去った弟の遺志でした。神父が盲信した「運命の引力」は、皮肉にもDIOの友としてではなく、ジョースター家の血脈と弱き者の覚悟の前に完全に打ち砕かれる結果となったのです。
この結末は、他者から与えられた絶対的な救済や決定論に依存し、自らの加害性から目を逸らす人間の脆さを鋭く告発しています。私たちが人生において直面する不条理から真に立ち直る道は、未来を予知して諦念を抱くことではなく、不確実な現実の中で他者と向き合い、自らの選択に責任を持つことにあるという痛烈な教訓を遺しています。