星野源が少年期に抱えた葛藤の出発点は、小学校3年生のときに起きた「ひとつの出来事」に遡ります。学校の授業中に突如として便意を催し、トイレに間に合わずにおもらしをしてしまったというアクシデントでした。小学生にとって、排泄の失敗は時に残酷なまでの集団心理を引き起こします。この事件を境に、彼はクラスメイトからからかいの対象となり、徐々に孤立感を深めていくことになります。
小学校高学年から中学校へと進むにつれ、周囲の何気ない視線や言葉に対する違和感は肥大化し、やがて身体症状として牙を剥きました。突然激しい動悸に襲われ、呼吸困難や強い死の恐怖に支配される「パニック障害」の発症です。当時を振り返る雑誌のインタビューにおいて、星野源は「外に出ようとすると激しい震えや吐き気に襲われ、玄関から一歩も出られなくなった」と述懐しています。
当時は現在ほどパニック障害という疾患への社会的な認知が進んでおらず、「思春期の甘え」や「神経過敏」として片付けられがちな時代でした。出口の見えない恐怖に苛まれた彼は、精神科で処方された抗不安薬を手放せなくなり、中学校生活の大部分を自室に閉じこもる不登校状態で過ごすことになります。布団の中で自問自答を繰り返し、自らの存在理由を削り取られるような日々――これこそが、後に彼が「人生で最も辛かった暗黒時代」と呼ぶ日々の正体でした。