法多山だんごを手にした誰もが目を留めるのが、小ぶりなお団子が「5本の細い竹串」に一列に連なって刺さり、ひと塊のこし餡で覆われている独特の形状です。この特異なスタイルには、江戸時代の歴史と深い仏教的背景が存在します。
公式の記録によると、第十三代将軍・徳川家定の治世であった安政元年(1854年)、法多山の門前に住んでいた寺士・八左エ門が考案した観世音名物の団子が江戸城へ献上されました。その見事な風味を気に入った将軍家より「くし団子」の命名を賜ったことが、現在の厄除だんごの始まりと伝えられています。
そして、なぜ「5本」なのかという問いには、仏教思想における人間の身体構造が関わっています。5本の串はそれぞれ人間の「頭・首・胴体・手・足」を表しており、団子全体で「人間の五体」を象徴しています。
法多山だんごを食べる際の正しい作法は、串を1本ずつバラバラにして食べるのではなく、「5本を一握りに持ち、そのまま口に運ぶ」あるいは「5本一緒に食べることで五体についた厄を落とし、五体満足・無病息災を祈る」とされています。自らの身体に見立てた団子をいただくことで、心身の穢れを祓い清めるという、門前町ならではの信仰体験が今も受け継がれているのです。