本作の最大の衝撃は、味方であるはずの連合軍将校が、敵のために架けた橋を自ら守ろうとする倒錯した心理描写にあります。なぜニコルソン大佐はこれほどまでに橋の建設に執着し、悲劇を引き起こしてしまったのでしょうか。
彼を突き動かしていたのは、兵士の士気を保ち、捕虜となっても軍人としての尊厳を失わないという「崇高な義務感」でした。しかし、そのプライドはいつしか目的化し、「敵の軍事作戦を助ける強固なインフラを完成させる」という本末転倒の狂気へとすり替わっていきます。
爆破装置を発見した直後、駆けつけたシアーズを見て彼が発した「What have I done?(私は一体、何をしてしまったんだ?)」という一言は、映画史に残る名台詞です。この瞬間、彼は自らの歪んだプライドが自国を裏切っていた事実に初めて直面しました。彼が起爆装置の上に倒れた行動は、「意識的に犯した贖罪の爆破」だったのか、それとも「被弾による偶然の産物」だったのか。デヴィッド・リーン監督はあえて明確な答えを示さず、軍隊組織の不条理と戦争の虚しさを観客に突きつけて幕を閉じます。軍医が虚空を見つめて呟く「狂気だ……狂気の沙汰だ(Madness! Madness!)」という言葉こそが、本作が放つ痛烈なメッセージです。