「まだ映るアナログテレビを買い替えさせるのはなぜか」という疑問や不満は、当時少なからず噴出しました。しかし、国と放送業界が地デジ化を断行した背景には、日本の情報通信インフラの命運を握る周波数帯の有効利用(電波再編)という国家戦略が存在していました。
アナログ放送は1チャンネルあたり広大な電波帯域を占有し、電波同士の混信を防ぐための「空き周波数(ガードバンド)」も多く必要としていました。一方、デジタル技術を用いればデータを圧縮して効率的に伝送できるため、使用する電波の帯域を大幅に圧縮できます。
この移行によって空けられた貴重な「プラチナバンド(700MHz〜900MHz帯)」などの周波数帯は、急速に普及し始めていたスマートフォン向けの高速モバイルデータ通信(LTE/4G/5G)やITS(高度道路交通システム)、防災行政無線へと再配分されました。今日の快適なモバイル通信環境は、まさに地デジ化による電波開放の恩恵によって支えられています。
もちろん、ゴースト障害(多重反射による画像の二重化)のないクリアなフルハイビジョン映像、臨場感ある5.1chサラウンド、リモコン操作によるデータ画面の表示や電子番組表(EPG)の導入といった、視聴体験の劇的な向上も大きな推進力となりました。