三上氏の作品を前にした人々が口を揃えて発するのが「本当に色鉛筆だけで描いているのか」という疑問です。筆跡を感じさせない滑らかなグラデーションや、反射光まで計算し尽くされた質感表現には、明確な理論と道具へのこだわりが存在します。
制作において中心的な役割を果たすのが、ドイツの名門ブランド・ファーバーカステル社の高級油性色鉛筆「ポリクロモス(Polychromos)」です。顔料の純度が高く耐光性に優れ、芯が硬めで緻密な描き込みに適したこの画材を、三上氏は極限まで尖らせて使用します。さらに、柔らかなタッチで鮮やかな発色を得られる「カリスマカラー」や、紙目を埋めるための特殊なブレンダー、ハイライトを削り出す細密消しゴムなどを巧みに組み合わせます。
特筆すべきは「混色」に対するアプローチです。色鉛筆はパレット上で色を混ぜることができないため、紙の上で薄い層を何十重にも重ねて目的の色を作り出します。例えば、一見すると単なる「赤色」のリンゴを描く際にも、下地に黄色や黄緑、影に補色である青や紫を忍ばせることで、単色塗りでは決して出せない深みと立体感を生み出しています。