コクワガタのメスは非常に強健で、日本の気候に適応した素晴らしい飼育対象です。ノコギリクワガタやミヤマクワガタが活動開始後にひと夏で一生を終えるのに対し、コクワガタは成虫になってから2年〜3年生きる長寿昆虫です。
基本的な飼育環境としては、小型〜中型の飼育ケースに昆虫マット(保水性のあるくぬぎ・ならマット)を3〜5cmほど敷き、転倒防止用の樹皮や小枝、高タンパクゼリーを配置します。乾燥とコバエの侵入を防ぐため、フタの間に不織布やディフェンスシートを挟む管理がベストです。
産卵を目指す場合は、活動開始済みのオスと同居させて交尾を確認するか、野外で夏に採集したメス(すでに野外で交尾を済ませている「持ち腹」の確率が高い)を用います。コクワガタは「材産み(朽ち木の中に産卵する)」の傾向が強いため、産卵セットは以下の手順で構築します。
まず、市販のクヌギ・コナラ産卵木(やや柔らかめの材)をバケツの水に1〜2時間浸して加水し、日陰で半日ほど陰干しして余分な水分を抜きます。次に樹皮をナイフなどで剥ぎ取り、飼育ケースの底に発酵マットを固く3cm詰めた上に材を横置きします。その周囲と上部をマットで埋め、材の頭が少し露出する程度にセットすれば完了です。温度を22℃〜26℃に保てば、メスは材を齧ってその中に1回で20〜30個前後の卵を産み落とします。
秋が深まり気温が15℃を下回ると、メスはマット深くに潜って越冬態勢に入ります。越冬中はエサを食べなくなりますが、マットの完全乾燥による脱水死が最大の死因となります。暖房の効いていない冷暗所(玄関や北側の部屋、5℃〜12℃程度が理想)に置き、1〜2ヶ月に1回マットの湿り気を確認して霧吹きを行うだけで、春になれば再び元気に這い出してきます。