『NANA』の物語において、大崎ナナのアイデンティティとヴィヴィアン・ウエストウッドは分かちがたく結びついています。作中でナナがヴィヴィアンを愛用する最大の理由は、彼女が敬愛するセックス・ピストルズ(Sex Pistols)をはじめとする、1970年代ロンドン・パンクカルチャーの精神性と直接呼応しているためです。
ヴィヴィアン・ウエストウッドは、マルコム・マクラーレンと共にピストルズの衣装を手掛け、パンクムーブメントを創り出した伝説のデザイナー。孤高のボーカリストとして自らの足で立ち、反逆のスピリットを叫ぶナナにとって、ヴィヴィアンの服は自らを奮い立たせる「戦闘服」そのものでした。
さらに見逃せないのが、作者である矢沢あい氏の服飾への深い造詣です。モード学園出身という経歴を持つ矢沢氏は、服の構造やドレープ、素材感をミリ単位で描き分けました。単にブランドロゴを描き込むのではなく、パンクの精神性とエレガンスが同居するヴィヴィアンの服をキャラクターの心情描写の装置として見事に昇華させたのです。