4人の子供たちのなかで唯一、芸能界という同じ表現の世界に身を投じているのが長男の櫻井海音です。現在でこそドラマや映画のクレジットで主役級としてその名を連ねていますが、彼のキャリア形成は決して「国民的ロックシンガーの息子」という下駄を履いた平坦な道ではありませんでした。
中学時代から本格的に打ち込んだドラムでは卓越したリズム感を誇り、高校時代にはサポートドラマーとして多数のセッションに参加。2019年にはロックバンド「インナージャーニー」を結成し、Kaito名義でメジャーデビューを目指して地道なライブハウス回りを行っていました。当時から関係者の間では「ドラムの音の芯が太く、タイム感が素晴らしい」と高く評価されていましたが、本人は父親の威光を公表せず、あくまで自力で居場所を勝ち取ろうとしていました。
転機となったのは2020年、NHK連続テレビ小説『エール』での俳優デビューでした。ドラマーとしての表現力をベースにした繊細な感情表現が演出陣の目に留まり、TBS系『逃げるは恥だが役に立つ 新春スペシャル』やABEMAの恋愛リアリティショー出演などを通じて一気に知名度を獲得します。その後、2023年10月に俳優業へ専念することを理由にインナージャーニーを前向きに脱退。自らの表現の軸足を完全に演技へとシフトさせました。
そして2024年冬から社会現象となったビッグプロジェクト、世界的人気コミックの実写化である『【推しの子】』のドラマ&映画で主人公・アクア役に抜擢されたことで、俳優としての評価は決定的なものとなりました。「復讐心を内に秘めた青年の光と影」を見事に体現した演技は、SNS上でも「親の七光りなどという先入観を木っ端微塵にした」「目力と静かな狂気の表現が素晴らしい」と絶賛の嵐を呼びました。