ネット上の掲示板やSNSでは、「目上の人にはとりあえず『ご指導ご鞭撻のほどご教授願います』と書いておけば間違いない」といった誤った知識が見受けられます。しかし、これは言葉の重複と意味の取り違えによる典型的な悪例です。
「ご指導ご鞭撻(ごしどうごべんたつ)」とは、指導(教え導くこと)と鞭撻(励まし戒めること)を組み合わせた慣用句であり、今後の長期的な関係性全体に対するお付き合いの姿勢をお願いする定型的な挨拶表現です。異動の挨拶、結婚式のスピーチ、年賀状、あるいは新規取引開始時の挨拶メールなどで広く用いられます。
一方で「ご教示」「ご教授」は、具体的な特定の事柄について教えてもらう行為そのものを指します。したがって、「ご指導ご鞭撻」と「ご教授」を無理に合体させて使うと、文章の主旨が曖昧になり、ビジネス文書としての切れ味を損ねてしまいます。「今後の長いお付き合いにおける姿勢」をお願いするのか、「目の前の具体的な課題について助言」を求めるのか、目的に応じて使い分ける明晰さが求められます。