お菓子の終売が発表されるたび、X(旧Twitter)などのSNSは「子どもの頃から大好きだったのに」「青春の味が消えてしまう」といった嘆きの投稿で溢れ返ります。発表直後にはスーパーやドラッグストアの棚から対象商品が瞬時に消え去り、フリマアプリでは定価の数倍から十数倍のプレミア価格で転売される光景が恒例行事となりました。
しかし、このネットの反応には、製菓メーカーを悩ませる深刻な心理的パラドックスが潜んでいます。食品マーケティング関係者の証言によると、「SNSで悲痛の叫びを投稿している消費者の9割以上は、過去1年間にそのお菓子を一度も自腹で購入していなかった層」というシビアな現実が浮き彫りになります。
行動経済学で言う「損失回避バイアス」が働き、手元から失われると知って初めてその価値を過大評価し、ノスタルジーに駆られて一時的な爆買いに走る。しかし、メーカーが必要としているのは、終売騒動による打ち上げ花火のような特需ではなく、日々の安定したリピート購入です。「愛されていたのに、買われていなかった」――この悲劇的な乖離こそが、名作菓子を歴史の闇に葬り去る最大の要因と言えます。