昔の高額納税者ランキング1位は誰?長者番付が廃止された真相と現在

昔の高額納税者ランキング1位は誰?長者番付が廃止された真相と現在

昔の高額納税者ランキング1位は誰?長者番付が廃止された真相と現在とはどのようなものなのか? 主要なファクトを整理してお届けします。

国民的な娯楽ニュースのように消費されていた高額納税者番付ですが、制度自体は2005年の税制改正によって正式に廃止され、2004年分の公表(2005年5月)を最後に完全に幕を閉じました。なぜ、半世紀以上にわたって続けられてきた国家的な情報開示制度が打ち切られたのでしょうか。

制度の発端は戦後間もない1947年(昭和22年)にさかのぼります。当時は深刻なインフレと食糧難の渦中にあり、脱税や闇物資の密売が横行していました。「国民の相互監視によって税逃れを防ぎ、申告納税制度を定着させる」という正義の旗印のもとに導入されたのが、所得税額が一定基準(のちに1,000万円超)を超えた者を税務署の掲示板に張り出す公示制度でした。

しかし、時代が下るにつれてその目的は形骸化し、深刻な弊害ばかりが噴出するようになります。制度廃止を決定づけた要因は、主に以下の3点に集約されます。

第一の理由は、凶悪犯罪の激増と直接的なターゲット化です。税務署に張り出された名簿には、納税者本人の氏名だけでなく「正確な自宅住所」まで記載されていました。これに目をつけた名簿業者や出版社が情報を収集し、「全国高額納税者名鑑」として市販したため、悪質なセールスや強請り・集り(ゆすり・たかり)、脅迫状の送付が日常茶飯事となったのです。実際に、公示名簿をもとに資産家の自宅を狙ったピッキング強盗、身代金目的の誘拐未遂事件が相次ぎ、警察庁からも防犯上の重大な懸念が繰り返し表明されていました。

第二の理由は、2005年4月に全面施行された個人情報保護法との決定的な矛盾です。国が民間事業者に対して個人情報の厳格な管理を義務付ける一方で、国税庁自らが国民の極めて機微な財産情報を一般公開している状態は法的な整合性を欠いており、世論や法曹界からの批判を耐え難いものにしました。

第三の理由は、税務行政のIT化です。コンピュータによる所得把握と銀行口座データの照合精度が劇的に向上したことで、「市民の密告や相互監視に頼る必要性」が完全に消滅しました。透明性の確保という建前以上に、掲載された納税者とその家族の生命・財産が脅かされる社会的リスクが上回った結果、制度は廃止へと追い込まれたのです。

小林 直樹
著者

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。