定価1万8000円前後のランニングシューズが8000円台、定価8000円前後のテックウェアが3000円台で販売されている光景は、ナイキファクトリーストアでは日常茶飯事です。消費者が抱く「なぜここまで驚異的に安いのか」という疑問に対し、アパレル流通の構造から分析すると、主に3つの明確な要因が浮かび上がります。
第1の要因は、前シーズン品のキャリーオーバー在庫とキャンセル在庫の換金スキームです。ナイキは世界規模で四半期ごとに新作を投入し続けるサイクルを採用しており、直営フラッグシップ店(Nike RiseやNike Liveなど)や大手スポーツ量販店で一定期間内に消化しきれなかった在庫は、ブランド価値を毀損しないよう通常のリテール市場から速やかに引き上げられます。それらを一手に集約し、現金化する最終防衛ラインがファクトリーストアの根幹機能です。
第2の要因として見落とせないのが、アウトレット専用に企画・製造された製品(MFO:Made For Outlet)の存在です。店内を見渡すと、過去に直営ブティックで見たことのないカラーリングや、品番体系が異なるモデルが並んでいます。これらは人気モデルのデザインエッセンスを踏襲しつつ、アッパーのメッシュ素材の番手を変更したり、ミッドソールのクッション素材を汎用EVAに変更したりすることで、最初から手頃な価格帯で提供できるようコスト設計されています。
第3の要因は、徹底して削ぎ落とされたローコスト・オペレーションです。シューズのフタが切り取られた箱(オープンボックス)を壁一面に積み上げる陳列方式を採用し、客が自らサイズを探して試着するセルフサービスを基本としています。接客スタッフの配置を最小限に抑え、バックヤードからの出し入れコストを極小化する仕組みが、プライスタグへ直接還元されているのです。