同業の俳優や女優たちに「最も尊敬する役者は誰か」と尋ねると、しばしば池脇千鶴の名前が挙がる。彼女がカメラの前に立つと、共演者の演技まで引き上げられるという声は後を絶たない。
相手のセリフをただ聞くだけでなく、その場の空気全体を吸い込み、自然なリアクションとして返す。その呼吸の合わせ方は計算されたものではなく、野生の勘に近いものがあると言われる。虚構であるはずの映画の撮影現場に、本物の「生」を持ち込む力。それこそが、彼女が日本の映画界で特別視される理由だ。
ある共演女優は、「池脇さんと対峙すると、嘘の演技が一切できなくなる。自分の剥き出しの感情を引き出されてしまうような恐怖と歓喜がある」と振り返る。