朝9時の開門を前に、春日井市松本町に位置する直売所前には、買い物カゴを携えた数十人の行列が日常的に形成されます。なぜこれほどまでに多くの買い物客を引きつけるのでしょうか。その背景には、一般的な流通構造との根本的な差異が存在します。
大手スーパーマーケットに並ぶ青果物は、産地で収穫された後に集出荷場、卸売市場、プロセスセンターを経由するため、収穫から店頭陳列までに通常2日〜4日のタイムラグが生じます。対して、JA尾張中央が統括する「かすがい農産物直売所」では、地元生産者が当日の早朝5時から7時にかけて収穫した泥付きの根菜や露地野菜を、自身の手で直接棚に並べる「インショップ・直接納品」システムが徹底されています。
現地で品定めを行っていた60代の主婦は、自らの購入体験を次のように語ります。「市内の量販店で買うホウレンソウと、ここで手に入れる朝採れホウレンソウでは、根元の甘みと葉の立ち上がりがまったく別物です。冷蔵庫の野菜室で1週間保存してもシャキシャキ感が失われないため、結果的に廃棄ロスがなくなり、家計の防衛につながっています」。鮮度の持続性がもたらす実質的な経済合理性が、地元住民の足を向けさせる最大のトリガーとなっています。