胸腔鏡下肺切除術は、胸の側面に開けた数カ所の小さな穴(ポート)から高性能カメラ(内視鏡)と専用の手術器具を挿入し、ハイビジョンモニターに映し出された拡大視野を確認しながら肺組織を切除する術式です。
従来の開胸手術では、肋骨の間に沿って約15〜25cmの大きな切開を加え、開胸器(肋骨を押し広げる器具)を使用して術野を確保していました。これに対し、胸腔鏡手術では肋骨を無理に広げる必要がほとんどありません。そのため、呼吸筋の温存が可能となり、術直後の呼吸機能低下を最小限に食い止められる点が決定的な強みです。
切除範囲の分類としては、病変の大きさや深さに応じて以下の3種類に大別されます。
- 胸腔鏡下肺部分切除術:病変部とその周囲の正常組織のみをごく小さく削り取る術式。
- 胸腔鏡下肺区域切除術:肺葉の中のさらに細かな区画(区域)単位で切除し、機能を可能な限り温存する術式。
- 胸腔鏡下肺葉切除術:右肺3葉・左肺2葉のうち、がんが存在する1つの肺葉を丸ごと切除する標準的な根治術。
現在では、モニターのみを見て切開创を完全にポートのみに限定する「完全胸腔鏡下手術(完全VATS)」から、モニター視覚と小さな直視創(3〜5cm程度)を併用するハイブリッド手術まで、病態と安全性を両立させるバリエーションが確立されています。