『約束のネバーランド』の根幹を支えたのは、血のつながらない「家族」として育ち、やがて過酷な脱獄計画を企てるエマ、ノーマン、レイの3人です。少年少女の無垢さと、生き残りを懸けた冷徹な頭脳戦という二面性を表現するため、制作陣は極めて緻密なキャスティングを行いました。
天真爛漫なムードメーカーでありながら、誰一人見捨てない不屈の闘志を持つエマ役には、幼少期から劇団ひまわりで吹き替えのキャリアを重ねてきた諸星すみれが抜擢されました。諸星が放つ濁りのないクリアな声質は、絶望的な世界観の中で唯一無二の「光」として機能し、制作発表会見でも「エマの太陽のような明るさと、直感的な鋭さを同時に表現できる唯一無二の存在」と絶賛されました。
一方、ハウスの頭脳であり、エマのために自らを犠牲にする覚悟を秘めたノーマン役には内田真礼を配置。内田は持ち前の透明感ある中高音に、怜悧な知性と静かな狂気にも似た愛情を宿らせ、少年の揺らぐ心境を完璧に具現化しました。そして、すべてを知りながら影で暗躍するリアリスト、レイ役を担当したのが少年役のエキスパートである伊瀬茉莉也です。伊瀬が紡ぐハスキーで乾いたトーンは、諦念の奥底に燃える執念を克明に描き出しました。
そして忘れてはならないのが、3人の「最愛の母」であり最大の敵として立ちはだかるママ・イザベラ役の甲斐田裕子です。洋画吹き替えで数々の名女優の声を担当してきた甲斐田は、聖母のような温もりと底知れぬ冷酷さが同居する「愛の歪み」を声のグラデーションだけで巧みに表現し、物語のサスペンス性を格段に引き上げました。