物語初期から読者に強烈なインパクトを与えたのが、首を跳ね飛ばされようが胴体を粉砕されようが瞬時に再生するバンの「不死身(アンデッド)」の肉体でした。この奇跡の力は、かつて妖精王の森にあった「生命の泉」を飲んだことで得たものであり、同時に泉を守る聖女エレインの命を奪うことになった赤色魔神の襲撃という、痛烈な悲劇の代償でもありました。
では、ファンならずとも衝撃を受けた「不死身の喪失」は一体なぜ起きたのでしょうか。公式コミックスおよびアニメ本編で描かれた真相は、メラスキュラの魔力「怨反魂の法(おんはんごんのほう)」で一時的に生かされていたエレインの命が、限界を迎えて消滅しようとしていた局面にあります。バンはエレインを再び失う苦痛を拒絶し、迷うことなく自らの不死の源泉である生命エネルギーを、新魔力「贈与(ギフト)」によってエレインへと注ぎ込みました。
この瞬間、バンは普通の「死ぬ人間」へと戻り、引き換えにエレインは完全な現世の生命を取り戻しました。かつて強盗として「欲しいものは力尽くで奪う」生き方をしていた男が、己の永遠の命を投げ打って愛する者に全てを「与える」存在へと昇華した瞬間であり、連載当時のアンケートや読者フォーラムでも「作中最高の純愛シーン」として大きな反響を呼びました。