火災現場や低所救助において、ロープが絡まることは救助対象者の死に直結します。そのため、消防・山岳救助隊が実践する消防士直伝のロープ収納術には、無駄を削ぎ落とした徹底的な合理化が施されています。
救助隊員の手記や訓練規程によると、彼らが多用するのは「クラップコイル(交互束ね)」や専用のロープバッグへのダイレクト収納です。ロープバッグへ収納する場合、多くの素人は「綺麗に巻いてからバッグに入れよう」としますが、プロは真逆の行動をとります。ロープの端をバッグの底に結びつけたら、巻かずにそのまま上からクシャクシャと押し込んでいくだけです。
一見すると乱暴に見えるこの収納法ですが、ロープには一切の回転(ねじれ)が加わっていません。そのため、バッグの口を開けて末端を引き出せば、途中で引っかかることなくスルスルと全量が出てきます。物理法則を逆手に取った「あえて巻かない」という選択肢は、極限状態を経験してきたレスキュー隊員ならではの究極の知恵といえます。