昨今の労働紛争で特に問題視されているのが、解雇規制の厳しい日本企業において「自発的な退職」を誘発させるために仕掛けられる巧妙な左遷工作です。
大手メーカーに30年以上勤め上げ、50代を迎えたベテラン社員が突如として閑職へ追いやられる事例がネット上の告白や労働相談で多数報告されています。例えば、長年管理職として貢献してきた53歳の男性社員が、些細な指導方法を巡ってパワハラ加害者の烙印を押され、十分な事実調査も経ないまま部長職を解任されて子会社の倉庫番へ転籍を命じられたケースがあります。男性は「部下を思っての指導だったが、会社は人件費削減の口実として自分を左遷した」と深い絶望を語っています。
こうした現場で用いられるのが、いわゆる「追い出し部屋」の実態です。パソコンも電話も与えられない隔離された小部屋で終日待機を命じられたり、スキルと無関係な単純作業を延々と反復させられたりすることで、社員の精神的自尊心を削り取っていきます。これはパワハラ類型における「過小な要求」および「人間関係からの切り離し」に該当する極めて悪質な手口です。
さらに警戒すべきは、左遷とセットで行われる自己都合退職の強要です。人事担当者や役員から「このまま残っても君のキャリアはない」「次のポストは用意できない」と執拗に圧力をかけられる場面が多発しています。労働者が明確に知っておくべきは、退職勧奨に応じる義務は法的に一切存在しないという点です。自由な意思決定を阻害する執拗な説得は違法な退職強要となり、損害賠償の対象となります。