アトピー特有の黒ずみは、単なるメラニン沈着にとどまりません。首周りや顔面に独特の網目状・さざ波状の黒ずみや皮膚の肥厚が生じる病態は、臨床現場でダーティーネック現象(Dirty Neck Syndrome)と呼ばれています。これは長期間にわたる繰り返しの炎症と物理的刺激によって引き起こされる複合的な皮膚病変です。
顔の皮膚は他の部位に比べて薄くデリケートです。かゆみに耐えかねて手や爪で激しく掻きむしる行為はもちろん、就寝中の無意識の擦り付け、汗をゴシゴシ拭き取る摩擦、洗顔時の過度な擦り洗いが重なることで、アトピー摩擦くすみが発生します。
慢性的な摩擦刺激が続くと、皮膚は生体を保護しようとして角質層を厚く硬く変化させます(苔癬化:たいせんか)。さらに、表皮と真皮の境界膜(基底膜)が炎症と物理的ダメージで破壊されると、本来は表皮内でターンオーバーとともに排出されるはずのメラニンが、下の「真皮層」へとこぼれ落ちてしまいます(メラニン滴下)。
真皮層に落ちたメラニンは、免疫細胞であるマクロファージ(貪食細胞)に取り込まれ、「メラノファージ」として真皮内に長期間居座り続けます。真皮層には表皮のような約28〜40日の活発なターンオーバーが存在しないため、独特の青黒い・灰褐色の濁ったくすみとして肌に定着してしまうのです。