本格的な仕上がりを目指すなら、豆選びからこだわりたい。関東を中心に祝い事で重宝されてきたのが「ささげ」だ。小豆は皮が薄く煮崩れしやすい特徴があり、胴から割れる様子が「切腹」を連想させるとして武家文化では敬遠された歴史がある。一方、ささげは皮が丈夫で破裂しにくく、美しい粒の形を保ったままふっくらと仕上がる。
豆の破裂を完璧に防ぐプロの工程は至ってシンプルだ。まず、ささげをたっぷりの水で火にかけ、沸騰したら一度茹で汁を捨てる「渋切り」を行う。その後、再び新しい水を注いで弱火で静かに煮含める。決してグラグラと煮立たせてはいけない。指先で軽く押して、少し芯が残る程度の硬さ(約八分どおり)で火を止め、煮汁の中でゆっくりと粗熱を取る。この穏やかな温度変化こそが、シワや割れを作らない最大の秘訣である。