歯の激痛の中には、一刻を争う救急疾患が隠れている場合があります。特に注意が必要なのが、心臓疾患による「心原性歯痛」と、ウイルス感染による「帯状疱疹の前駆痛」です。
1. 心血管系の発作:狭心症・心筋梗塞による放散痛の見分け方
心臓の筋肉に血液が行き届かなくなる狭心症や心筋梗塞では、心臓からの痛みの信号が左側の頸部、肩、そして左下顎や左奥歯の神経へ放散します。以下の兆候がある場合、歯科ではなく直ちに循環器内科の受診、あるいは救急要請を検討してください。
- 労作との連動:重い荷物を持ったとき、早足で歩いたとき、階段を上ったときに歯痛が急激に悪化し、立ち止まって休むと5〜10分で嘘のように痛みが引く。
- 痛みの局在:痛む場所を指1本で特定できず、「左側の顎から奥歯全体が締め付けられる」「胸の圧迫感や息苦しさを伴う」。
- 冷温刺激への無反応:冷たい水や熱いスープを口に含んでも、歯の痛みに変化がない。
2. ウイルス性神経炎:帯状疱疹の初期症状による歯痛
水痘・帯状疱疹ウイルスが三叉神経節に再活性化した場合、顔面や口腔内の粘膜に水疱(発疹)が出現する3日〜1週間前から激しい神経痛が先行します。「歯の奥が焼けつくように痛い」「針で刺されるようなチクチクした痛みが続く」といった症状があり、痛む側の頭皮や頬にピリピリとした違和感がある場合は、皮膚科や神経内科での早期抗ウイルス薬治療が必須となります。
3. 自律神経症状を伴う群発頭痛と歯痛の深い関連性
「目の奥をスプーンでえぐられるような痛み」と形容される群発頭痛も、三叉神経・副交感神経反射により、同側の上顎奥歯に激烈な痛みを放散させます。夜間や早朝の決まった時間帯に決まって発生し、充血、涙、鼻づまりを伴う場合、脳神経内科や頭痛外来での酸素吸入療法やトリプタン製剤の投与が適応となります。