鳥取市栄町で70年以上にわたり映画文化を灯し続けた「鳥取シネマ」が閉館したのは2022年8月31日のことでした。2スクリーン(シネマ1:160席、シネマ2:63席)を備え、駅前商店街の一角でハリウッド大作から単館系ミニシアター作品までを幅広く届けてきた同館の灯が消えた瞬間は、地元メディアやSNSでも大きな衝撃とともに報じられました。
運営会社が公表した閉館の主たる要因は、複合的な経営課題の重複でした。第一に「建物の老朽化と耐震基準への対応コスト」、第二にデジタル映写機をはじめとする「高額な上映設備の維持・更新費用の負担」、そして決定打となったのが「コロナ禍に伴う動客数の激減と動画配信サービスの急速な普及」です。
関係者の手記や当時の報道資料によると、最盛期には立ち見が出るほどの賑わいを見せたものの、2000年代以降の郊外型大型シネコンの台頭と車社会の進展によって中心市街地の空洞化が加速。支配人は当時の取材に対し「地域の文化拠点として意地でも維持したかったが、設備更新の投資を回収できる見通しが立たなくなった」と苦渋の決断を語っていました。この閉館をもって、鳥取市は全国でも稀な「映画館のない県庁所在地」となりました。