この名歌は、平安時代前期に編纂された最初の勅撰和歌集『古今和歌集』の巻第八「離別歌(巻頭歌・365番)」に収録され、のちに藤原定家によって『小倉百人一首』の16番に選ばれました。
離別の情景を詠む歌は、往々にして嘆きや悲壮感に傾きがちです。しかし、行平の歌は「いなば」と「まつ」の流れるような音の響き、そして「今帰り来む」と言い切る決然とした結句によって、格調高く前向きな余韻を生み出しています。
言葉の掛け合わせというパズルのような技巧を高度に用いながらも、技巧倒れにならず、純粋な心情の吐露として胸を打つ点こそが、千年以上もの間アンソロジーの頂点に君臨し続ける理由です。