冷感アームカバーに手を通した瞬間、確かに「ひんやり」とした心地よさを感じます。しかし、しばらく歩いていると「直射日光が当たらないだけで、むしろ腕全体に熱がこもっている気がする」という違和感を抱いた経験を持つ人は少なくありません。この現象の背景には、接触冷感の物理的なメカニズムと、使用環境のミスマッチが存在します。
生地に触れたときに冷たく感じる強さは、熱移動の指標である接触冷感 Q-max値(最大熱吸収速度)で数値化されます。一般的な生地のQ-max値が0.1〜0.15程度であるのに対し、冷感アームカバーの多くは0.3〜0.5W/cm²以上という高い数値を誇ります。ただし、この数値は「肌から生地へ熱が瞬時に移動する量」を示しているに過ぎません。肌と生地の温度が同等になれば、熱移動は止まり、冷感は失われます。
ネット上で「逆に暑い」と不満を漏らすユーザーの多くは、空気がよどんだ室内や無風の炎天下で着用しているケースが目立ちます。冷感アームカバーが持続的に涼しさを生み出す理由は、熱伝導そのものではなく、かいた汗を急速に吸い上げて蒸発させる「気化熱冷却」にあります。外気の風が当たることで水分が蒸発し、腕の表面温度を一気に奪う設計になっているため、無風状態では単に「布を1枚余分に重ね着している状態」に陥ってしまうのです。