ネット上の都市伝説として根強いのが、「意味不明な漢字の羅列(文字化け)をクリックすると端末がウイルスに感染する」「ダークウェブの暗号文である」という言説です。しかし、これは明確な誤解です。
文字化けが発生する根本的理由は、「テキストデータの保存形式」と「閲覧ソフトの読み込み形式」の不一致にあります。日本のインターネット環境では、かつて標準だった「Shift_JIS(Windows-31J)」と、世界標準である「UTF-8」が長年混在してきました。例えば、UTF-8で書かれた「あ」という文字のバイナリデータを、古いメールソフトが誤ってShift_JISとして画面に表示しようとすると、全く別の漢字である「縺ゅ」が呼び出されてしまいます。
文字化けの解読方法は至ってシンプルです。Web上に公開されている「文字化け解読ツール(文字化けテスター)」に対象の文字列を貼り付け、「UTF-8 → Shift_JIS」や「Shift_JIS → UTF-8」といった変換パターンを総当たりで試すだけで、瞬時に元の自然な日本語文章へと復元できます。危険なプログラムが埋め込まれているわけではないため、過度に恐れる必要はありません。
また、エジプトの「ヒエログリフ絵文字の意味」に関しても大きな誤解が存在します。SNSでは「𓀀」が「頭を抱えて落ち込む社畜の姿」などとネタにされますが、エジプト学における正式な意味は「男性」を表す限定詞(カテゴリーを示す決定詞)であり、落ち込んでいるわけではありません。ネットユーザーが視覚的なフォルムだけを恣意的に切り取り、独自のユーモアとして再定義しているのが実態です。
さらに、言語学者が使用する「国際音声記号(IPA)」も、ネット上では「悪魔召喚の呪文」「謎の記号」と面白おかしく扱われがちです。しかし、例えば「[ʔ]」は声門閉鎖音(日本語で『あっ!』と息を止めた瞬間の声帯の動き)を表す厳密な学術記号であり、読み方の規則さえ学べば、人間の身体的な発声メカニズムを忠実に写し取った極めて論理的な文字体系であることが分かります。