通販番組や店頭POPで目にする「ダイヤモンド粒子配合」や「マーブルコート」という言葉に、過度な幻想を抱いてはなりません。ダイヤモンドコーティングフライパンの真相は、滑りやすさそのものをダイヤモンドが生み出しているわけではないという点です。
非粘着性を担っている物質は、どこまでいってもベースとなる「フッ素樹脂」です。ダイヤモンドやチタン、人工大理石(マーブル)の微粒子は、柔らかいフッ素樹脂の中に骨材として混ぜ込まれ、調理器具同士のこすれや金属ヘラの引っかき傷に対する「耐摩耗性」を底上げしているに過ぎません。微粒子が入っているからといって強火加熱に強くなるわけではなく、熱でフッ素樹脂自体が分解してしまえば、等しくこびり付きが発生します。
また、国際的なPFAS(有機フッ素化合物)規制の流れを受け、フッ素樹脂加工フライパンの安全性と注意点を気にする消費者が増えています。製造工程で環境負荷が懸念されたPFOA(ペルフルオロオクタン酸)については、主要メーカーにおいて全廃が完了しており、現行の正規流通品は「PFOAフリー」です。通常の調理温度(150℃〜200℃)で使用する限り、有害ガスが発生することはありません。ただし、360℃を超える異常過熱(長時間の空焚きなど)が起きると熱分解生成ガスが発生し、人体に頭痛などの不快症状を引き起こす恐れがあるため、日常の取り扱いにおいて過度な空焚きを防ぐ配慮は不可欠です。
一方、完全なPTFEフリー・PFASフリーを掲げて台頭したセラミックフライパンのメリットとデメリットも冷静に見極める必要があります。無機鉱物由来のセラミックは400℃以上の耐熱性を持ち、食材に熱が均一に通る美しい焼き目がつけられる反面、親水性(水になじみやすい性質)が高いため、油を極薄く引いて温度を安定させないと、食材のタンパク質がミクロの孔に入り込んで焦げ付きやすいという繊細な側面を持っています。