1月中旬の試験当日、神戸市東灘区の灘中キャンパス周辺は、異様な熱気と緊張感に包まれます。早朝から各塾のトップ講師陣がずらりと並び、受験生を激励する姿は風物詩となってきました。そして試験終了の合図とともに、関西大手進学塾による熾烈な「情報戦」の幕が切って落とされます。
試験当日の午後には、各社から灘中過去問解答速報や日能研灘中入試速報がウェブ上に矢継ぎ早に公開されます。大手各塾の算数科講師陣が控室に籠もり、数十人体制で問題を解いて別解を検証し、速報の速さと解説の精度を競い合う光景は、もはや教育産業の総力戦と言っても過言ではありません。
ネット上の受験コミュニティやSNS上では、解答速報が更新されるたびに「今年の算数1日目は易化した」「2日目の大問4は誰も解けない」といった書き込みが秒単位で飛び交います。しかし、現場の受験生を取材した手記や合格者の回顧録から見えてくるのは、そうした外野の喧騒とは対照的な「孤独な精神力」です。
関西圏の灘中特訓で長年圧倒的なシェアを誇る浜学園灘中予想問題を何十回と解き、模試で「A判定」を連発していた最上位生であっても、本番初日の1問目でパニックに陥り、そのまま不合格の辛酸を舐める事例は決して珍しくありません。逆に、判定がC判定やD判定であっても、初日の難問を「みんな解けていないはずだ」と即座に切り捨て、2日目に抜群の集中力を発揮して逆転合格をもぎ取る受験生も存在します。塾が提供する膨大なデータや的中実績は強力な武器になりますが、最終的に試験会場の机に向かったとき、自らの不安を制御できるのは研ぎ澄まされたメンタルに他なりません。