北村草太は、主人公・黒板純にとって憧れであり、超えるべき壁であり、何より頼れる「兄貴」だった。都会から富良野の寒村へと連れてこられ、苛立ちと不安を抱えていた幼い純と螢。彼らを最初にバイクの後ろに乗せ、広い世界を見せたのが草太だ。
岩城滉一が持ち込んだのは、土着の農村社会には存在し得なかった圧倒的な「色気」と「異物感」だった。泥臭い農作業服を着ていても漂うダンディズム。牧場経営という厳しい現実に抗い、時に夢に破れ、恋に奔走する姿は、作品における人間臭さの象徴でもあった。彼が存在したからこそ、富良野の風景は単なる郷愁の対象ではなく、生々しい若者たちの格闘の場へと昇華されたのである。